充たされざる者 カズオ イシグロ 

2009年6月17日 16:05

日本生まれのイギリス人作家であるカズオ イシグロも、
新作がでたら飛びついてしまう作家の一人です。

そのなかでも、今回は「充たされざる者」をとりあげたいと思います。

これまでのカズオイシグロ作品で、どれがイチバン好き?
と聞かれると、かなり、迷うところです。
とくに「わたしを離さないで」を読んでしまったら、です。

しかし敢えて、私はこの「充たされざる者」をあげたい。

このシュールな世界観、
やるせない人生の迷宮、
いいのかナ、笑っても?と、誰かに訊ねたくなるユーモア。
この本を読んでいる最中、何度くびをひねったか。
何回、「カワッテル・・・」とつぶやかずにはいられなかったか。
そんなモロモロがとにかく他の作家の本とは一線を画しています。

本の中に現れる世界の存在感。
これがものすごいです。
夢で行ったことのあるような街です、そこは。

特に、湖に近い巨大な団地を訪れるシーンが好きです。
あの造り。
すごく好きです。
団地を歩きまわる登場人物たちに、強風が何度も湖の方角から吹きつけてきますが、
この風の感じも、ちょっとほかでは得られないタッチです。
頭の中にあるはずの大事な記憶が、
この風で吹き飛んでいってしまいそうな、
不安感と、妙な安心感を同時にあおるのです。

とにかく何回も読んで、
その世界をウロつきまわりたくなる1冊です。

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