1.作者あ行の最近のブログ記事

2010年8月 5日 16:32

短編集「千年の祈り」で沢山の感動をくれたイーユン・リー初の長編小説です。
その静かな語り口から紡ぎだされる物語には、かなり強烈なインパクトがありました。
フィクションだということはわかってはいるのですが、これからは中国の人たちを見る目が変わってしまいそうです。
あなた達は一体、どんなものごとを乗り越えてきたのかと・・・。
近代中国の歴史というのは、隣国でありながら、日本で平穏に生きてきた私のような人間にははかりしれない試練であったのだと感じました。
以前から「中国って何でもケタが違う」という印象はもっていましたが、その理由の一端がわかったような気もしました。

何よりも、さまざまな試練を乗り越えて、それでも生きる人々の逞しさに心が激しく揺さぶられるのを感じます。
そして、そんな人々の生きざまを描いたイーユン・リーの筆力には脱帽!と感じました。

2010年6月21日 15:37

あの「十角館の殺人」の綾辻さんが、
またやってくれましたぁ。
ちっくしょ~!
面白いよ~!
久々に、大柄な長編小説を、
夢中になって、1日で、読みこんでしまいました。
ホントに面白いんです。
この小説。

主人公となるのは中学生ということで、
むむ、っと例の「告白」を想起してしまいますが、
本格ミステリーにしか描けない書き方で、
彼らを生き生きと描写しています。
物語に託すという方法でなら、
かなりの残酷シーンも耐えられます。
でも「告白」はちょっと・・・
エゲツなくなぁい?という私なのです。

ミステリーに、ホラーの味付けを加えたこの作品は、
一度目は怖がって読んで、
二度目は味わって読む。
という姿勢が正しいものと思います。

何度でも楽しめる作品です。

2010年4月 7日 14:37

簡素な文体で世界を美しく見せてくれる、
素敵な短編集です。

作者は1972年北京生まれ。
北京大学を卒業後、アメリカで免疫学を修める。
その後、作家を志すエリートたちの集うアイオア大学で創作を学ぶ。
現在は米国オークランドのミルズ大学で創作を教えている。

この作品は英語で書かれたものだそうで、
外国語で書かれたということで、あのスッキリと美しい文体が生まれたのでしょうか。

現実世界には、貧しい者、報われない者、カッコ悪い者、などなど、
物語の主人公として、いまひとつな人々が溢れていますが、
どんな登場人物もイーユン・リーの手にかかれば、
豊かな愛情で生き生きとしてきます。
いまは母国を離れているようですが、作者の深く広い大陸的な愛を感じました。


2009年8月26日 16:16

またも短編集です。
大久保康雄氏訳の新潮文庫短編集1です。
これまたスッゴク面白い本であります。

O・ヘンリの作品には、
社会の端っこの、ほんのりと薄暗い辺りに住まう人々が、
数多く登場します。
そうです。あなたやわたしのような、です。

普通に生活しているつもりでも、
たまに、ある日突然ホームレスになったらどうしよう?
とか、やむにやまれぬ事情で犯罪者になっちゃったりすることもあるかも?
なんて思って不安になったりすることありませんか?
大丈夫。
そんなときにはO・ヘンリを読んでおけば安心です。
どんな不遇におちいっても、きちんと生きていけるぞ、
というような、妙な安心感を得ることができます。

しかも文章のはしばしが美しい。
描写や隠喩が細やかで風のように軽やかで。
そんな言葉の流れに浸っているだけでも至福です。

特に好きな1編は、
「ハーグレイブズの一人二役」でしょうか。
これをきちんと読めば、
最近テレビなんかではやっている「ちょっといい話」モノが、
如何にチャチか、わかるはずです。

2009年7月29日 16:46

食わず嫌いだった浅田次郎作品にはまって数か月。
このところ読みまくっています。

何がいけなかったか、食わず嫌い。
映画「鉄道員」と「壬生義士伝」の貧乏しみったれ感のせいです。
あれで小説もどうせしみったれなんだろうと思いこんでました。
スミマセン。
いやアリガトウ。
いまは日々そう叫んでいます。
涙、流してます。

思えば最近ぜんぜん泣いてなかった。
人生で最も辛いと感じたとき、
涙はまったく出なかった。
あぁ、ホントに辛い時は涙がでないんだな、と初めて知りました。

それがどうでしょう?
最近は涙腺ゆるみっぱなしです。
天切り松のおかげです。
しかも、不思議に爽快な涙。
なんだか身も心も洗われていくような、
そんなキレイな涙なんです。
仁義の切り方、松の話し方、本物の人情などなど、
全部が最高です。

2009年6月19日 14:29

こたびは「雨月物語」でゆきまする。

序にあるとおり、
「雨は霽れ月がは朦朧の夜、窓下に編成して、以て梓氏に畀ふ。題して雨月物語と云ふ」
であります。

私は夜の散歩をよくします。
家の近所に理想的な交差点があり、そこにかかる歩道橋には理想的なベンチがあるので、
座って車の流れを目で追ったり、たまに夜空を見上げたりもします。
雨上がりには空気が澄んで、ことのほか気分のよいものです。
そして朧月がみえる夜には、何かが起こりそうな気配を感じます。
先日惜しくも亡くなられた忌野清志郎さんも永遠に歌いつづけるように、
雨上がりの夜空の月は特別な存在なのです。

雨月物語のなかで、
雨がやみ、月がでて、くるぞくるぞ、というワクワク感がたまらなく好きです。

義の心や、夫婦の想いの切なさや、おどろしさよりも、
その透明感のある文章の美しさがきわだって、物語が胸にせまってきます。

未読の「春雨物語」も楽しみです。